人は鏡、万象はわが師

茨城県水戸市で住宅会社(株)ディレクタや防水・塗装・基礎工事や白アリ予防の(有)シュウトクドローンスクールなど数社を経営しています。渡辺秀徳です。

本日も水戸市倫理法人会のモーニングセミナーに参加してきました。

25年前の自分と出会う

会長の石井邦明さんのお話は、「25年前の自分に出会う」という内容。

石井邦明デザインスタジオ一級建築士事務所の代表でもある石井会長ですが、20代は家具工房に勤めていたそう。

デザイナー川上元美氏の事務所から依頼を受け、家具の図面を制作していたそうなのですが、ひょんなことから最近、石井会長が当時引いた、鏡台の図面と出会うきっかけがありったんだとか。

改めて、まるで25年前の自分と出会ったような不思議な感覚を覚えたそう。

20代の自分の「本気」と出会うことで、感じるものがあったのでしょう。なかなか味わえない感覚だと思います。

人は鏡、万象はわが師

今日のモーニングセミナーの内容に移りますね。

講師は水戸市倫理法人会の事務長を務める古河貴志さん。

県内外にヘアカット専門店「カットハウスひかり」を 76店舗展開する(株)エイチ・エス・ケイで「ファシリテーター」という役職を務める方です。ちなみに同社代表取締役の市毛社長も水戸市倫理法人会の会員なんです。

講演のテーマは「少しの努力で大きな変化」。古河さんの人生はとてもドラマティック。

私も悪ガキでしたが、古河さんもなかなかの悪ガキだったそうです(すみません…)。

カップラーメンは出来るのに3分かかるのに、どうやって喰うんだ

買って一度も読まないまま教科書を燃やしてしまうような高校時代、大学進学は視野になく「とにかく金が稼げる仕事がしたい」と、大阪本社で理容業を全国展開する企業の都内店舗に就職。

理容業を選んだ理由は稼げるから

先輩たちはみんなBMWやベンツといった高級車に乗っていて、そこに憧れた。

ある日聞いたんだそうです。

先輩、どうやったら先輩たちみたいに稼げるようになれますか?

上司の言うことを、言われた通りやればいいんだよ

先輩の教えに従って、 会社の寮と店舗を行き来する毎日。 朝5時から夜中の23時まで働き続け、休日は年間でたったの5日程度だったそう。

休憩時間は「3分」と決められており、食事は3分以内で終わらせないといけない

ある日、カップラーメンにお湯を注いでいたら先輩からひっぱたかれたそうです。

カップラーメンは出来るのに3分かかるのに、どうやって喰うんだ

どんなに理不尽な事を言われようが、文句ひとつ言わずにひたすら仕事に打ち込む日々。その甲斐あって、古河さんはスピード出世を遂げます。20代で店長になってしまったのです。

もちろん、部下であるスタッフのほとんどは年下。古河さん自身が先輩にやられてきた理不尽を、同じようにスタッフに強いるようになっていました

お前たちは俺に言われたことを、やればいいんだ!


ここで私の考えを挟みます。

社員に何かを指示する時に、指示の中身が正しいかどうかも考えないまま、ただただ人に対して高圧的に命令すること。これが上に立つものである!

私もそんな風に理不尽を理不尽と気づけない時期がありましたので、この部分にはとても共感できました。


4トントラックに詰め込んだ燃料と食料、現金300万円の意味

そんな古河さんの転機となったのが、2011年3月11日金曜日、14時46分。東日本大震災です。

新幹線で東北に向け、移動している最中でした。強い揺れを感じ、一番近くの福島駅で降りてすぐに、店舗のスタッフの安否確認ため、電話するが、全く繋がらない。

すると一本の電話が。070から始まる、PHSの番号(PHSは繋がったそうです)。

大阪本社からの電話でした。

「今どこですか?」

「福島駅です。普通じゃない揺れがあって、今…」

「これから言うことを、すぐにやってください。

プリペイド携帯を買う。〇〇銀行の口座に300万円振り込むので、それを下ろす。4トントラックを借りる。トラック一杯の食糧と燃料を買って、石巻の店舗に向かってください。何かあればこの電話まで」

プツッ。電話は切れました。

ひとまず言われた通りの事をやろうとするが、街は大混乱でそれどころではない。

070で始まるPHSに電話をかけなおす。

「市内は大混乱でそれどころではありません。銀行の引き落としどころかトラックを借りるなんて…」

「では、現在甲信越からマネージャーの〇〇が石巻に向かっているので、彼と合流してください」

しばらくすると、4トントラック一杯に食料と燃料を詰め込んだマネージャーと合流できた。

後になって振り返れば、勤めていた企業の本社は大阪。阪神淡路大震災の経験から、迅速な対応が出来たんだと想像できました。

また本社から電話がかかってきます。

「向かっている途中で警察や消防隊から止められると思いますが、救援物資です、と伝えれば通過できますから」

その言葉どおり、石巻に近づくにつれ、声を掛けられることが多くなったが、救援物資を運ぶトラックは止められなかった。

連絡も取れないスタッフたちを、どうやって探すのか…

石巻の店舗があった場所に向かうと、呆然と立ち尽くすスタッフがひとり。

「はやく、トラックに乗りなさい!他のスタッフは??」

声をかけても反応しない。トラックにも乗ってくれない。

「金曜日なんです、今日。売上金、銀行に入金しないと…」彼は言いました。

でも彼とスタッフたちが、ついさっきまで働いていた店舗は、もうどこにもありませんでした。

彼を無理やりトラックに乗せ、あたりを走り回り、なんとか数名のスタッフを発見。

そのままの足で青森に向かいました。青森にも、会社の寮があるからです。

寮に着くと、預かった300万円から、スタッフに現金を渡す。

「家族のこと、他のスタッフのこと、心配だと思うけど、まずは俺たちに任せて、とりあえず休んでくれ!」

そう言い残して、古河さんたちは石巻に戻って安否確認をしたそうです。

悪夢のような震災から3日後。見慣れたPHSの番号から電話がかかってきました。

「石巻のスタッフ、何で出勤してないの。いまは青森の寮にいるんでしょ。住むところも、当座のお金も渡したでしょ。うちは年中無休だよ。青森の店で働かせろよ

あまりの驚きに、古河さんはしばらく絶句してしまったそう。

「彼らは被災者ですよ。家族のことだってまだわからない人もいます!」

「古河。お前の仕事は、人を働かせて金を稼ぐことだろ。」

古河さんの中で、何かが音を立てて崩れ落ちました。それまで、上司が言うことは文字通り「何でもやってきた」という古河さん。その時ばかりは「はい」と言えなかった。

自分は何のために仕事をしているのか。こんなことするために、休まず働いて来たのか。自然と口から出た言葉は

「今の彼らに働けなんて、言えません」

「分かった。お前の代わりなんていくらでもいるから

この出来事がきっかけで、その後半年かけて全ての業務を引き継ぎ、会社を去ることになったそうです。

鏡に映った自分を毎日3分間見つめる意味

地元茨城に帰り、自分の今までの経験から転職先を探す中で、現在の職場である(株)エイチ・エス・ケイに出会ったそう。

初めて研修で本社に行った際に、きさくなオジサン(失礼しました!)だと思って

「エイチ・エス・ケイの本社って、ここですか?」

と尋ねた相手こそが、市毛社長だったというのは後日談。

入社当初は、身体に強くしみ込んだ前職のクセで、マネージャーの胸ぐらを掴んで

「お前それでも管理者か!辞めちまえ!」と怒鳴ることもあったとか。

今の温和な古河さんからは想像できない姿ですよね。

そんな古河さんでしたが、市毛社長の勧めもあって倫理法人会に入会し、新鮮な学びを得ていったそう。

その中で始めたのが「毎日鏡を3分間、笑顔で見る」というトレーニング。

「3分」「笑顔」。この二つが非常に重要です。

笑顔が引きつっていたり、30秒しか笑顔が続かなかったりと、その日の自分のコンディションが分かるようになってくるそうです。

さらに続けていると、「いったい自分は、どうなりたいんだろう」と、自分自身に問いかけるようになっていった。

過去を振り返ると悪ガキ時代も、前職時代も、とにかく目立ちたかった。金を稼いで一番になりたかった。

もっと言えば、目立つことで「自分」という存在に気づいて欲しかったんだ…ということに気づいたんだそうです。

現在の古河さんの仕事はファシリテーター。

スタッフ自身が「自分で実現したいこと」を実現するために協力する仕事だ、と古河さんは語ります。

何気ない会話を通して、仕事を通して、スタッフの自己実現をサポートする。そして、結果として彼らから感謝される存在になる。

人から感謝されるって本当にうれしい。これこそ、私の存在価値だと思いました

仕事をする理由は人それぞれだと思いますし、価値観も人それぞれです。

私は今日の講演で古河さんの「人となり」を知ることができて本当に良かったと思います。

渡辺秀徳でした。

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