ファミリーが繋ぐ、お客様との絆

茨城県水戸市で住宅会社(株)ディレクタや防水・塗装・基礎工事や白アリ予防の(有)シュウトクドローンスクール、外構を中心に暮らしの提案をするコモレビなど数社を経営しています。渡辺秀徳です。

今回は、最近私が出会った方の中でも特に感銘を受けたお二人を、ご紹介します。合資会社升屋酒造店、オーナーの海野卓哉さんとその奥様、由記子さんです。

ウナギ弁当の予約数日本一を9年連続で達成した、海野セブンの海野さん、と紹介した方が早いかもしれません。セブンイレブン全国約21,000店の中で1番ウナギ弁当を販売しているという、驚異的な記録です。しかも9年連続で。

2番でも3番でもダメ。日本一にこだわる理由

右がオーナーの海野卓哉さん、左が奥様の由記子さん。

海野さんが経営するのは日立市に2店舗、東海村に1店舗、合計3店のセブンイレブン。通称「海野セブン」です。掲げるのは「私たちは家族です」という理念です。海野セブンではスタッフを「ファミリー」と呼んでいるそう。この理念が、ウナギ弁当の販売日本一に繋がっていました。

コンビニの社会的な立場を上げるぞって決心するきっかけがあって」と由記子さん。

「パートさんから『遅刻します』って連絡があって。そのパートさんが、泣きながら出勤してきたのよ。事情を聞いたら、『旦那から会社まで送ってけって言われた。お前はパートで、俺は正社員なんだから俺を優先して当然だって言われた』って私に言うの。ベテランで、ファミリーの信頼も厚い方なのに。働いているのがコンビニじゃなくて、歯医者さんとか別の職場だったら、こうはならなかったんじゃないかな…って」

由記子さんは続けます。

「他にもあるのよ。大学時代にバイトで働いてくれていた子が、正社員として就職してくれて。その子の友達が来店した時に『就職、コンビニで良いの?』と言われてるのが聞こえて。ショックだった。これじゃダメだ!って、思ったのよ」

社会は変えられないが、セブンイレブンの価値は上げられる。由記子さんは、そう考えました。そのためにまず始めたのは、タイトルを獲るということ。日立で一番、茨城で一番では意味が無い。日本で一番になるんだ!と、「自分と約束」したそうです。日本一のセブンイレブンで働いている、という自信と誇りをファミリーみんなに持ってもらいたいと考えたのです。

当初、社員からは疑問の声が上がったそう。

「なんでそこまで一番にこだわるの?」

「頑張る過程も大事なんだから、2番でも3番でも良いじゃない」

そんな声を聞くたびに

「あなたは1番になったことないでしょ?そういうことは1番になってから言え!」と戦い続けました。

1番を獲ると自分と約束してから、今日まで1日たりとも2番で良いと思ったことはありません

ウナギの販売を通して得られたもの

画像出典:https://www.sej.co.jp/products/doyoushi.html

では、日本一ウナギ弁当を売るセブンイレブンにするために、何をやったのか。そこを深掘りしていきます。

「最初の3年はひたすら数を追っかけていったんだけど、それは違うって分かった出来事があって。ある日、店長が失踪したのよ。『気が付いたら車に乗ってて、目の前が海だった。もう1回アクセルを踏んだら、ドボンと行った』って。毎日、1位になれなかったらどうしようって、怖かったんだって。そんな見えない恐怖のせいで、大切なファミリーを失ったら元も子もない。他の店と、自分の店を比べてるからそうなっちゃうの。だから、戦う相手は外じゃなくて、自分だよねって話をみんなにした。去年頼んでくれたお客様が今年頼んでくれなかったのは、今年1年、自分がお客様から好かれないような暮らしぶりだったからだって、反省すればいい。その上で、また来年買ってもらえるような自分になればいい。だから、目標の数字を無くしたの」

「やっぱり、数を売るって考えた瞬間から、『自分のため』になっちゃう。そうじゃなくて買ってくれる『お客様のため』にならないといけない。言い換えれば、買ってくれたお客様が喜んでいただける状況を作るってこと。例えば、住んでいるアパートの大家さんがご高齢で、一人暮らししている。一人で食事って、寂しいじゃない。だから『一緒に食べよっ』って大家さんを誘って、一緒にウナギ弁当を食べる。そしたら、大家さんもうれしいよね?また食べたいな、って思ってくれるじゃない」

ウナギの販売を通してファミリーが成長している、と由記子さんは振り返ります。

「みんな、ウナギを売ってからの人生の方が楽しいんだと思う。だから頑張って売るんじゃないかな。だってウナギって3,000円もするんだよ?コンビニなのに。400円出せば、めっちゃ美味しいお肉の弁当が食べられるのにね。お客様の喜ぶ顔が見たいから、買ってもらえる自分になろうって思うんじゃないかな」

お店に怒鳴り込んで来たのは、学校の先生

「他にも、やり方はファミリーの数だけある。例えば、うちのセブンイレブンは大学生のバイトさんも多いので、教授にチラシを持って行って、ウナギ弁当を宣伝したりとか。ここでも、出来事があったの」

「ある高校生のバイトさんが先生にウナギのチラシを渡したら、『勉強がおろそかなのにアルバイトなんて、何やってるんだ!』って怒られたんですって。だからいつものように、彼女に言ったのよ。『先生から嫌われるような成績のあなたが悪いんでしょ』って。でも話を聞いてったら、ちょっと違ったの。宿題をやってないんだって。勉強が分からないから、宿題が出来ないんだって。数学がぜんぜん分からないんだ、って。そしたら彼女のお店の店長、実は数学の先生を目指していた人で。彼女に勉強を教えるようになったのよ」

「いざフタを開けてみたら、彼女、数学どころじゃなくて、算数すら分かってなくて。片親で、子供の頃に親が勉強を見てくれる時間なんて無かったんだって。だから、店長と膝を突き合わせて、自分の勉強を見てもらうことが、ものすごく楽しかったんだって。算数からのスタートだから、どんどん分かるようになって、宿題もやるようになった」

「そしたらある日、彼女の先生が店に怒鳴り込んで来たの。『あんた達、うちの学生捕まえて何やってるの?宿題まで提出させて、そこまでしてウナギの予約が取りたいのか!』って。そんな残念な考えしかできないあなたに、売るウナギはございません、お帰りください、って言っちゃった。『どういう事なんですか?』って先生から聞かれたので、経緯を全て話したの。先生にウナギを勧めたのはきっかけであって、ファミリーが抱えていた問題を解決していく事の方がうちにとって大事で、ウナギの予約なんてどうでも良かったんです、って。そしたら先生は謝罪してくれて、何年かウナギを買ってくれたのよ」

家に帰らない母と支える父。365日「ファミリー」のために

インタビュー中も、絶えず微笑みながら隣で妻を見守っている、オーナーであり夫の卓哉さん。卓哉さんの存在なくして、海野セブンは成り立たないでしょう。

「妻が偉いのは、365日常にファミリーのこと、お客さんのことを考えて行動しているところ。先日、『巣立った子供達から、お母さんはいつも家にいない。僕たちはお父さんに育てられた』って言われたって妻から聞いて。だから妻に『そうじゃないよ』って言ったんです」と卓哉さんは話し始めました。

「俺はまったくそんな風に思ってないし、もしそうだったとしたら、俺も悪いよねって。妻は『ファミリー』のために毎日頑張ってくれてるんだから。お陰様で、本当に幸せなんです」と卓哉さん。

「それはちょっと違ってて。『お母さんがそういう風に好きに仕事できたのは、お父さんのお陰だよねっていうのを、お母さん忘れないでね』っていう意味で子供達は言ってんのよ。お母さんが暴走して、出ずっぱりになっちゃった時も、しっかりお父さんが見てくれてたんだってことを、忘れちゃダメって。私を否定してる訳じゃなくて」と由記子さんが間髪入れずにフォロー。

「これじゃ、バカ夫婦だと思われちゃうよ」由記子さんは照れ笑い。

失礼な言い方になってしまいますが、海野セブンは決して良い場所に位置している訳ではありません。お二人には、人を惹きつける魅力があると思います。その魅力は、夫婦の仲の良さ、そして家族愛、ひいては「ファミリーへの愛情」が創り出しているものなのかもしれません。

自分との約束を必ず守る

ウナギの予約販売日本一ばかりがフォーカスされていますが、実は海野セブン、恵方巻やクリスマスケーキ、おせち、お歳暮、年賀状の印刷と、数々の予約販売でも輝かしい成績をおさめています。

これは私の意見になりますが、成功している企業には理由があります。逆に、失敗している理由の多くは、経営者の慢心です。経営が傾くと、経営者は理由を外に探したがります。雇っている人が悪い、環境が悪い、景気が悪い…そんな風に、「人のせい」にしたがる。私の口癖に、「成功はみんなのお陰、失敗は自分のせい」という言葉がありますが、失敗は確実に経営者の責任なんです。そもそも経営者と従業員では、会社に対する想いや熱量は違って当たり前ですから。

海野夫妻の話を聞いていて印象的だったのが、「自分との約束を必ず守る」という言葉です。どんな小さなことでも必ずやり切ることで、責任のベクトルが、ぜんぶ自分に向くんですよね。

海野さんは、「日本一のセブンイレブンになる」という自分との約束を守り続けています。その徹底した姿から、ぜひ皆さんにも学びがあれば良いなと思います。

海野由記子さんのFacebookアカウントはこちらです。

気になった方はぜひ!海野セブンに行ってみてください。

渡辺秀徳でした。

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